反発されるのは、当たり前のこと
「実家を片付けたい」と切り出して、親に嫌な顔をされた——よくある話です。そして多くの人が、そこで話を止めてしまいます。
反発が起きる理由はいくつかあります。
自分の死を前提にした話に聞こえる。 これが最も大きい要因です。「もしものときのために」という枕詞は、こちらの善意とは無関係に「死ぬ準備をしろ」と伝わります。
自分の判断力を疑われたように感じる。 物が多い=管理できていない、という含みを読み取られます。
物には理由がある。 傍から見て不要でも、本人にとっては経緯のある物です。「なぜ取ってあるのか」を聞かずに「いらないでしょ」と言うと、否定されたと受け取られます。
つまり反発は、親が頑固だから起きるのではなく、切り出し方の構造から自然に生じるものです。言い方を変えれば減らせます。
最初の一言を変える
「片付けよう」から入らないでください。 代わりに使えるのが、「どこに何があるか教えてほしい」です。
これは片付けの提案ではなく、教えを請う形になります。親の側は「管理している人」として扱われるので、反発が起きにくい。しかも実際に必要な情報でもあります。
聞いておきたいのは次のようなことです。
- 通帳・印鑑・保険証券・年金手帳の保管場所
- 加入している保険、契約している金融機関
- 不動産の権利証、登記の名義
- かかりつけの病院、常用している薬
- 頼りにしている親族・知人の連絡先
これらは片付けの話ではなく、日常の困りごとの話としてできます。 「入院したときにどこを見ればいいか分からないと困る」という言い方なら、死の話にはなりません。
物の話は「増やさない」から
物そのものの話をするなら、減らす話より「これ以上増やさない」話のほうが受け入れられやすいです。
「捨てよう」は否定ですが、「同じものが3つあるから、次は買わなくて済むように置き場所を決めよう」は協力の提案になります。主語が「物」ではなく「これからの暮らし」になるのがポイントです。
実際に減らす段階に入る場合も、親が判断する形を崩さないでください。 こちらが選別して確認を求めるのではなく、親に決めてもらい、こちらは運ぶ役に徹する。時間はかかりますが、揉めません。
帰省で一気に片付けようとしない
遠方に住んでいると、限られた帰省の間に終わらせたくなります。これが最も失敗しやすいパターンです。
短時間で成果を出そうとすると、こちらが判断して処分する形になります。親の側から見れば「勝手に捨てられた」になり、次から協力してもらえなくなります。一度こうなると、以後の話し合いのコストが跳ね上がります。
現実的なのは、1回の帰省で1か所です。押し入れの一段、食器棚の一区画。それだけでも、続ければ確実に減ります。
エンディングノートという入り口
書式のあるものから入るという方法もあります。エンディングノートは、片付けの話を「作業」ではなく「記入」に変換します。
法務省が公表しているフォーマットもあり、何を書けばよいかの目安になります。書き方についてはエンディングノートの書き方にまとめています。
デジタル面(スマホのパスワード、サブスク契約、ネット銀行など)は、本人しか知らないまま残ると解約すらできなくなります。こちらはデジタル遺品整理とはを参照してください。「スマホが開けないと困る」という話は、死を前提にしなくてもできる話です。
きょうだいとの合意を先に
見落とされがちですが、親に切り出す前に、きょうだいの間で方針を合わせておいてください。
一人が進めていることを他のきょうだいが知らないと、「勝手に実家の物を処分している」という構図になりかねません。親の側も、子どもたちの言うことが食い違うと動けなくなります。
「誰が何を担当するか」まで決める必要はありません。 「そろそろ話を始めようと思う」と共有しておくだけで、後の摩擦がかなり減ります。
進まなくても、それでいい
最後に正直なことを書きます。話しても進まないことは普通にあります。
親には親の時間の感覚があり、こちらの都合で動くものではありません。一度で片付けの合意を取ろうとせず、「どこに何があるか」だけでも分かれば、それは十分な前進です。
実際に相続が始まったときに何をするかは、親が亡くなった後の手続き、期限の一覧と実家の片付け、何から始める?にまとめてあります。そのときに備えておく、という意味では、情報を聞いておくことが最も効きます。
よくある質問
# Q. 「まだ早い」と言われて話が終わってしまいます。
片付けの話としては早くても、保管場所の共有は今日からできます。 目的を「物を減らす」から「情報を知る」に変えると、続けやすくなります。
# Q. 明らかにゴミが溜まっている場合はどうすればいいですか?
生活に支障が出ている場合は、片付けの話とは別の問題である可能性があります。実家が「ごみ屋敷」になるのはなぜ?とごみ屋敷の片付け、自治体は動いてくれる?を確認してください。
# Q. 親の留守中に少しずつ捨てるのはどうでしょうか。
やめてください。 発覚したときの信頼の失い方が大きく、以後の協力が得られなくなります。時間はかかっても、本人の判断を通してください。
# Q. 何から聞けばいいか分かりません。
「入院したときに、どこを見れば手続きができるか」が入りやすい入り口です。実際に必要な情報であり、死を前提にした質問にもなりません。
